現場で活躍する皆さんの現任訓練を行いました
- kinugasa0
- 2023年5月15日
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ある出版社の依頼で、現場で働くソーシャルワーカーやケアワーカーの方を対象としたOJTのプログラムを、二日間にわたって実施する機会をいただきました。 参加された方は生活保護のケースワーカーや精神科病棟のPSWなどの相談支援専門職に加え、児童養護施設で働く保育士や高齢者施設で働く介護福祉士の方など、多岐にわたりました。また、市町村や都道府県行政で福祉分野に関わる方など、バラエティに富んだ参加者となりました。 午前9時から午後6時までのみっちり5コマを、初日は「理論篇」、二日目は「実践編」として、とくにソーシャルワーカーとして働くことが出来るような専門性の獲得に向けて、実際的なプログラムを展開しました。
初日は自己開示から始まり、事例研究を通したソーシャルワークの必要性、また身体機能や疾患だけを覧るのではなく、「生活を包括的に支える視点」の具象化に向けた援助技術の体系的な明示、さらには最近の私の持論である「現象学的共感」のあり方に至までを、主にバズセッションとブレーン・ストーミングの手法を用いて展開してゆきます。
二日目は理論に基づいて、具体的な方法技術を身につけるためのロールプレイ、自己覚知の演習、KJ法を用いた小集団討議など、些か詰め込みすぎではないかと思われるほどに教育コンテンツを展開してゆきました。 これが非常に疲れました! 何しろ、参加されている方は実践の中で、百戦錬磨の経験を積んでこられた強者ばかりです。その方々が納得できる現任訓練を行うためには、講師の私が「圧倒的な力の差」を見せつけなければなりません。
例えば、生活保護ケースワークの問題点を指摘する際にも、単に補足性の原理を説明するだけではなく、自己覚知のないままそれを行うことが、如何に暴力的であるかを説得力を持って説明するためには、私自身の実践についての知見と経験が問われるわけです。 とくに今回、インテークのロールプレイでは発達障害の女性の方を例とした面接を摂りましたが、例えば障害種別はおろか、薬の種類ひとつ、使えるサービスも種々に渡って熟知しておかねばなりません。 これは、私自身が実践の場に身を置いているからこそ出来ることです。単に理屈の説明ではなく、それを実践できる「実践力」を講師である私自身が身につけておかないと、あっという間に化けの皮がはがれてしまいます。 その意味に於いて、参加された皆さんと口角泡を飛ばして議論しつつ、かつ演習や実技も踏まえて、ソーシャルワークの「実践」についてのOJTが展開できたのは、当研究所が標榜する「実践と理論の往還」についても、有意義な取り組みであったと考えています。事実、参加された皆さんが最初は様子見だったのがだんだんと身を乗り出してこられ、闊達な議論の中で自らの専門性について改めて自覚されていく様は、講師を務めた身からも壮観なものがありました。 最後には再び皆さんと出会うことを約して別れましたが、確かにクタクタに疲れたものの、非常に意義のある、充実した時間であったと自画自賛しています。なによりも、言うだけでなく実際にやってみて、説得力のある現任訓練を展開できるファシリティがあることは、当研究所にとって大きなメリットであると考えています。 今後も、こうした実践者の皆さんとともに学ぶ機会を大切にしつつ、「実践の科学化」に向けて改めて励む勇気を私の方がいただいた、非常に得がたい機会となりました。 この機会をいただいた主催者の方々には、この場を借りて改めて厚く御礼申し上げたいと思います。

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